Developing innovative therapies that bring new hope to patients with dilated cardiomyopathy (DCM) — that is the mission of CardioGenix.
Shaping the Future of
Cardiomyopathy
DCMについて
拡張型心筋症(DCM)は、心室の拡大と心筋の収縮機能低下を主な特徴とする心筋疾患で、心不全や致死性不整脈を引き起こします。特に遺伝性DCM(familial DCM)は、原 因遺伝子が特定されるケースで、特発性DCMの20〜40%を占めるとされ、家族歴のある場合にはさらに高率です。日本循環器学会のガイドラインでも、遺伝学的検査と遺伝カウンセリングが強く推奨されています。主な原因遺伝子として、TTN(タイチン/コネクチン)(家族性DCMの約15〜25%を占める最多)、LMNA(ラミンA/C)、MYH7、TNNT2(心筋トロポニンT)などが知られています。これらの変異は、心筋細胞の構造・収縮機構・核膜機能・カルシウムハンドリングなどに異常をもたらし、進行性の心不全へつながります。
臨床像と診断
遺伝性DCMの臨床像は、息切れ・浮腫などの心不全症状、不整脈、突然死リスクが特徴です。特にLMNA関連では、伝導障害や心室性不整脈が早期に出現しやすく、予後が不良な傾向があります。TNNT2変異では若年発症の心室拡大と収縮不全が目立ちます。
診断では、心エコーや心臓MRIで左室拡大・駆出率低下を確認した上で、次世代シーケンサー(NGS)を用いた遺伝子パネル検査を行います。家族スクリーニング(cascade screening)により、血縁者の早期発見・予防が可能になります。2024年改訂の日本循環器学会ガイドラインでは、遺伝子検査の重要性がさらに強調されています。
治療の現状と展望
標準治療として、β遮断薬、ARNI、MRA、SGLT2阻害薬などの心不全薬物 療法、ICD(植え込み型除細動器)やCRT(心臓再同期療法)が用いられます。重症例では心臓移植が唯一の根治的選択肢ですが、ドナー不足が課題です。日本では心臓移植待機者の多くをDCMが占めています。近年は「遺伝子型別層別化医療」が進んでおり、変異の種類によってリスクや治療反応性が異なることが明らかになっています。将来的には、ゲノム編集や遺伝子治療、個別化薬剤の開発が期待されています。
当研究所の研究アプローチ
当研究所では、特にTNNT2 ΔK210変異に着目した研究を推進しています。この変異は、ヒト家族性DCM患者で同定されたリジンをコードする3塩基の欠失変異で、世界で初めてknock-inマウスモデルとして再現されました(Du et al., Circ Res 2007)。このモデルは、乳児期からの心室拡大、心不全、突然死を忠実に再現し、myofilamentのCa²⁺感受性低下が病態の核心であることを明らかにしました。
-
病態解明:Ca²⁺感受性低下による心筋収縮力低下が代償性リモデリングを引き起こし、不整脈基質の形成や心不全進行に関与することを証明。また、運動介入の効果や性差、関連する分子シグナル(例: CaMKII経路)についても解析を進めています。
-
治療探索:Ca²⁺増感剤や既存薬の再利用、遺伝子治療アプローチなどを、このモデルやiPS心筋細胞を活用して評価。サルコメア機能異常という共通メカニズムを標的とした新規治療戦略の開発を目指しています。
このTNNT2 ΔK210 KIマウスは、国内外の研究機関でも広く用いられる貴重なツールであり、基礎研究から臨床応用(トランスレーショナル研究)への橋渡しに貢献しています。将来的には、シングルセル解析やゲノム編集技術を組み合わせ、変異ごとの精密医療を実現したいと考えています。遺伝性DCMは、遺伝子診断の進歩により「個別化治療」が現実的になってきました。当研究所は、この疾患の病態解明と革新的治療開発を通じて、患者さんのQOL向上と心臓移植依存の低減に貢献してまいります。
ご質問や共同研究などのご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
発症年齢
子供から高齢者まで幅広いが、遺伝性と非遺伝性で傾向が異なる。
遺伝性DCM
-
若年発症(20〜40代)のリスクが高い。
-
小児期(特に乳児期)では遺伝性が相対的に多く予後不良。
-
遺伝子変異を持っていても発症しない人や、高齢になるまで発症しない人がいる。
非遺伝性DCM
-
遺伝性より発症年齢がやや遅く中年〜高齢(50〜60代以降)に多い傾向。
-
感染などがきっかけになることが多い。
主な原因
遺伝性DCM
常染色体優性遺伝が多く、原因遺伝子としてTTN、LMNA、MYH7、TNNT2などが代表的。
非遺伝性DCM
ウイルス感染後心筋炎、自己免疫異常、アルコール、薬剤、環境要因などが関与(遺伝的素因が一部背景にあるケースも)
最新治療
心臓の再建手術や、遺伝子治療の研究が進んでおり、長期的な改善が期待されています。